何が違うの?頭痛・生理痛薬の種類

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 解熱鎮痛薬の比較についてはいろんな記事やクチコミサイトなどで書かれています。この記事は解熱鎮痛薬の選び方にお困りの方に対して、特徴と選び方を書いていこうと思っていました。ところが情けない話ですが、調べるほどに訳が分からなくなりました。とりあえず確実な事実と私見をはっきりと分けるために語尾に注意して書いたので、語尾に注意して読んでいただければと思います。

 解熱鎮痛薬にはいろんな有効成分がありますが、この記事ではアスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンの有名どころに絞って比較してみます。

目次

 

実はよく分からない効果の違い

 よく口コミサイトで「ロキソニンが良く効く」とか「アセトアミノフェンは効かない」とか言われています。その成分量はあまり問題にされていないような情報もあります。確かに、服用量の増減によって効果の差がひっくり返らないくらいの格の違いがある場合もあります。この違いを「有効性」の違いと言います。本当にロキソニンとアセトアミノフェンに格の違いがあるのでしょうか。考えてみましょう。

 結論から言えばどれも成分の有効性は同じです。アセトアミノフェンは「鎮痛・下熱作用はアスピリンと同等」、イブプロフェンは「同等」とグッドマンギルマン薬理書(有名な教科書)に書いています。ロキソプロフェンは書かれていません。

 つまり、どの薬も有効成分の量を増やせば立場が逆転するのです。

 では、次に量の問題を絡めていきます。

 同じ量での効果の強弱のことを「効力」といいます。教科書(NEW薬理学)を見るとアスピリンと比較してインドメタシンという薬の効力は20~30倍で、プロフェン系の薬はその間と書かれています。ということはロキソプロフェンはアスピリンに対して10~15倍効力が強いと考えられるでしょう。

 ところが、市販されているアスピリンの一回量は660mgが多く、ロキソプロフェンは60mg固定です。結局、だいたい同じ効果になるように用量調節されているのです。

 つまり、効果という意味ではどの解熱鎮痛薬も大同小異ということです。

  したがって、ある薬を飲んで効果の強さに不満がある場合は、他の有効成分を含む商品に変えるよりも同じ有効成分が多く含まれている商品を選んだ方が保守的な判断だと私は思います。

  ただし、アセトアミノフェンに関しては市販薬の成分量では効果が劣ります。この点については複数の論文で明らかになっています。

 効き目の早さと持続力

効果にあまり差がない。では効き目の速さと持続力です。

血中濃度から考える

 一般用医薬品では血中濃度に関する資料はありません。そこで、医療用医薬品のデータを見てみることにします。注意点は、効き目の速さと持続力が有効成分だけに依存していないというところです。どういった添加物を使ってどういった方法で錠剤化しているといった製剤上の事柄も影響します。つまり、医療用医薬品のデータを見て一般用医薬品の効果を推測する事は妥当では無いかもしれないということです。しかし、これら4つの成分であれば製剤上特殊な加工をしていないので、大丈夫かなと思います。以下がデータ。
 
成分名 商品名 最高血中濃度到達 半減期 一般用医薬品と同じか?メーカー問い合わせ結果
アセトアミノフェン カロナール錠200mg2錠 0.46±0.19時間 2.36±0.28時間 言及なし
アスピリン バファリン配合錠A330 2錠 約1時間 0.83±0.59時間(代謝物サリチル酸は2.97±0.28時間) 同じと考えられる
イブプロフェン ブルフェン錠100 2錠 2.1±0.2時間 1.8±0.1時間 言及なし
ロキソプロフェン ロキソニン錠60mg 1錠 0.45±0.03時間 1.22±0.07時間 同じと考えられる
 
アセトアミノフェンは早く効いて、それなりに効果が続く。
アスピリンは速さは中くくらいで、共有結合のため半減期は効果の持続とは関係ないがCOXが入れ替わるまで効果が続く。
イブプロフェンは効き目が遅くて、長く効く。
ロキソプロフェンは早く効いてすぐ効果が下がる(ただし活性代謝物あり)。
 
 と血中濃度から推測できます。
 ちなみに効果持続時間はアセトアミノフェンは添付文書に「2~6時間」と書かれており、後の全てはインタビューフォームに「該当資料なし」と書かれています。公式資料からでは比較できないようです。
 

血中濃度≠効果

 なお、効果の持続が血中濃度の低下と必ずしも相関しません。posteffectと言い血中濃度が下がっても効果が残り続ける現象があります。その原因は様々なものがありますが、受容体からの乖離の遅れによるものがあるようです。
 ロキソプロフェンやイブプロフェンはくっつく場所が全く同じである事から持続時間の違いを血中濃度の違いで推し量っても良いかもしれません。
 アスピリンはシクロオキシゲナーゼにがっちりくっ付いているので血中濃度はあまり問題になりません。また、アスピリンの代謝は早いです。このため他の薬との持続時間の比較がむずかしいです。
 効果の持続の評価をさらに難しくするのが、血管壁からのシクロオキシゲナーゼの補給の速さです。シクロオキシゲナーゼにくっついて離れないアスピリンの効果が約6時間しか続かないのは、シクロオキシゲナーゼの補給が早いからです。つまり、解熱鎮痛薬の効果の持続については、シクロオキシゲナーゼの補給と血中濃度の増減の両方を評価しないといけません。もちろんそういったデータはありません。
 このように解熱鎮痛薬の効果持続時間を総合的に勘定することが難しいのです。

効果と副作用の少ないアセトアミノフェン

 アセトアミノフェンについては比較的確実に言えることが多いです。その他の解熱鎮痛薬と比較して効果が弱いということです。これについて研究した論文はあります。また、胃腸障害が少ないということもはっきりとしています。

 アセトアミノフェンは米国の使用量に合わせて用量が多くなりました。ところが米国にはアセトアミノフェンの過剰服用という社会問題があります。今度は米国がアセトアミノフェンの用量を下げようとしています。

www.fda.gov

 なんでしょう。この問題も輸入されなければ良いのですが。

なんだかよく分からないアスピリン

  アスピリンも非常に特徴の強い薬です。解熱鎮痛薬はシクロオキシゲナーゼという酵素にくっついて効果を発揮します。普通の解熱鎮痛薬は競合結合で、時間と共に血液内の濃度が下がれば、薬はシクロオキシゲナーゼから離れていって効果が弱くなっていきます。しかし、アスピリンは共有結合でガッチリくっついて血液内の濃度が下がろうが離れません。となると理論的には長時間作用するということになるかもしれません。となると生理痛向きか?と考えられないこともないと思います。ただし、血管壁からのシクロオキシゲナーゼの合成は結構短時間のようなので、延々と効き続けるということはなく、6時間くらいの効果だとメーカーからは聞いています。

データに乏しいロキソプロフェン

 効果が高く、胃腸障害が少ないと巷で言われているロキソプロフェン。教科書でも強いと書いています。
ザルトプロフェン、ロキソプロフェンはCOX-2に比較的選択性をもつプロフェンで、抗炎症作用に加えて鎮痛作用が強い。
(NEW薬理学改訂第7版より引用)
 
 ところがどっこい、比較試験が見つかりません。問題は何と比較して強く、胃腸障害が少ないのかです。「ロキソプロフェン 比較」で検索したら、

www.ncbi.nlm.nih.gov

celecoxibばかりです。celecoxibは医療用医薬品の鎮痛薬で市販薬ではありません。アセトアミノフェンはちょっとあります。

 私も効果は強いとは思うものの根拠になる論文は見つかりませんでした。

 また、同教科書では「半減期は短い」と書かれています。確かにこの4つの中では短いので、長時間効果が欲しい生理痛よりも頭痛に適しているのかもしれません。 

補助成分の意義

 効果の補助としてアセトアミノフェンに、副作用防止としてNSAIDに補助成分が含まれていることが多いです。それぞれの意義について考えてみましょう。

カフェイン

 ACE処方などに含まれています。ACE処方は効果の弱いアセトアミノフェンにエテンザミドとカフェインで補助をするという配合内容です。その価値についてコクランライブラリに研究がありました。
The addition of caffeine (≥ 100 mg) to a standard dose of commonly used analgesics provides a small but important increase in the proportion of participants who experience a good level of pain relief.

一般的に使用されている標準用量の鎮痛薬にカフェイン(100mg以上)を追加することで、良好な水準まで痛みが軽減した参加者の割合にわずかであるが重要な増加がある。(拙訳)

アリルイソプロピルアセチル尿素

 鎮痛効果の補助として含まれており、鎮静作用もあります。デメリットは依存性があること、固定薬疹があることです。米国では(鎮静剤としての商品で)出血性紫斑病が多数報告されました。詳しいリンクは下です。別段事情が無い限り、含まれていない方がいいと私は思います。jamanetwork.com

ブロモバレリル尿素 

 アリルイソプロピルアセチル尿素と同様に、鎮痛効果の補助として含まれており、鎮静作用もあります。もちろん依存性はあります。太宰治が自殺に使おうとした薬で有名です。別段事情が無い限り、含まれていない方がいい成分だと私は思います。

 

乾燥水酸化アルミニウムゲル

 胃酸を中和することで胃腸障害の副作用を減らします。

胃が弱い人は?

アセトアミノフェンは胃腸障害が少ないので、胃が弱い人にちょうど良いでしょう。効果については譲らざるを得ないと思います。アセトアミノフェンのみの商品はこちら。

 

【第2類医薬品】タイレノールA 20錠

【第2類医薬品】タイレノールA 20錠

 

 頭痛に一番いいのは?

  素早く効く薬が頭痛には相性がいいと思われます。となるとロキソプロフェンになるかもしれません。ただし大同小異です。

 

【第1類医薬品】ロキソニンS 12錠 ※セルフメディケーション税制対象商品

【第1類医薬品】ロキソニンS 12錠 ※セルフメディケーション税制対象商品

 

 

生理痛にいいのは?

 生理痛の場合は持続時間の方が大事だと思います。持続時間が長いのはイブプロフェンかアスピリンかもしれません。

 

【指定第2類医薬品】リングルアイビー 36カプセル ※セルフメディケーション税制対象商品
 
【指定第2類医薬品】バファリンA(80錠+10錠) 90錠

【指定第2類医薬品】バファリンA(80錠+10錠) 90錠

 

 

NSAIDが効かない生理痛にはもう一つ選択肢を

 どの鎮痛薬を使っても効かないくらい生理痛のひどい方もいます。決められた量を越えた量を飲んでも効果は得られず、副作用だけが酷くなるでしょう。この場合、違ったアプローチがあります。ブチルスコポラミンという成分です。プロスタグランジンによって子宮が収縮することで生理痛になる訳ですが、ブチルスコポラミンは内臓の収縮を抑える作用があります。NSAIDと違った作用で生理痛を抑えるわけです。

 エルペインは、NSAIDのイブプロフェンとブチルスコポラミンによる生理痛専用の医薬品です。 

まとめ

・どの薬の効果も大同小異。服用量次第(たくさん飲めばいいとは言っていない)

・アセトアミノフェンだけは効果も胃腸障害の副作用も弱い

・効果持続時間はどうだろう…「かもしれない」としか言えない※画像はイメージです