妊娠と奇形とサプリメントについて、目いっぱいまとめてみた

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妊娠中の女性の方々が不安に感じることは共通しています。それは、”生まれてくる子供が元気で生まれてきてくれるのか”という不安だと思います。

いわゆる”奇形児”が生まれてくるのは、毎年 世界中で30~40万例と推計されており、近年日本では増加傾向にあることが報告されています(年間600人以上)。

 それでは、奇形児が生まれてくる原因には何があるでしょうか?そして、奇形児の出産を予防することができるのでしょうか?

目次

奇形の種類と傾向

 奇形について少し詳しく解説します。

 薬の副作用とは関係なく、奇形は発生します。一般的にみられるのは、外奇形では口唇・口蓋裂や、二分脊椎(脊髄に異常が起こり運動機能に問題が生じる)や、無脳症(脳が正常に形成されない)などです。二分脊椎と無脳症を合わせて、神経管閉鎖障害と言います。

 神経管閉鎖障害の原因については、はっきりとわからないことが多いようですが、言えることはすべての妊娠女性に共通してリスクがあるということです。

 神経管閉鎖障害は欧州では毎年約4,500例、世界中では30万〜40万例と推計されており、その92%は環境的な要因が関連すると考えられています。神経管閉鎖障害は他の先進国では減少していますが、日本では増加傾向にあります(年間600人以上)。

神経管閉鎖障害には葉酸が大事

 結論から言えば、葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害を予防することが出来ます。そして、後述しますが他のビタミンB群(B6、B12)も大事です。奇形児が生まれてくる原因には様々なものがありますが、神経管閉鎖障害という奇形のリスク低減やその他の奇形の予防には、妊娠前や妊娠早期からの十分な葉酸の摂取が必要であるようです。

 また、栄養素は摂取してもすぐに血液中の濃度や貯蔵量を満たせるわけではありません。そのため、妊娠時に必要な栄養素や不足しがちな栄養素は、妊娠前から摂取しておくことが大切であると言われています。中でも葉酸は妊娠1ヶ月以上前からの摂取開始が推奨されています。

具体的な一日量はそれぞれ、葉酸が640〜800μg(厚労省は640μg推奨、サプリメーカーは800μg推奨)、ビタミンB6が1.4mg、ビタミンB12が2.8μgです。

私が推奨する商品と使い方

バイエル薬品のエレビット

 

エレビット

エレビット

 

長所

葉酸の量が800µgと多いので、比較的早く体内に葉酸が蓄積される。栄養素の含有量が厚労省が推奨する栄養素量とほとんどの成分が合致しており、妊婦用にカスタマイズされていること。

 

短所

30日分で4320円と高価であること。

 

特におすすめの方

妊娠が分かるのが遅かった方

 

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大塚製薬 ネイチャーメイド 葉酸 150粒

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短所

葉酸の量が640µgということ。エレビットより1週間くらい早めに飲んででほしい。

 

特におすすめの方

妊活中の方で長期の使用を検討している方

 

理由は下の方に記載しています。

なぜ葉酸は奇形のリスクを低減できるのか

 一般的に、その事実の確からしさを推し量るとき、理論的なしくみの解明と実際のデータによる裏付けの2つが必要になってくると思います。そこで、まず奇形の発生への葉酸を含むビタミンB群の関与について現在分かっている範囲で書いてみます。次に、データの裏付けを歴史的な流れに沿って解説します。

葉酸と奇形のしくみ

 神経管閉鎖障害の大部分は原因不明です。しかし、一部の神経管閉鎖障害は高ホモシステイン血症によって引き起こされることが分かっています。他の奇形についてもホモシステインと関連することを示唆する論文がちらほらあります。

 下図は、ホモシステインの代謝とビタミンB11、B6、B12との関係について示したものです。ビタミンB11は天然葉酸と合成された葉酸の混合物です。矢印の方向が代謝される方向です。矢印の横に書いてある「Methyltransferase」などは代謝を助ける酵素です。

 

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Paediatr Drugs 2000 Nov-Dec;2(6) 437-449

Primary Prevention of Neural-Tube Defects and Some Other Major Congential Abnormalities Recommendations for the Appropriate Use of Folic Acid During Pregnancy

 を改変

 例えば、ホモシステインがメチオニンという物質へ代謝されるにはビタミンB6が関与していることが分かると思います。

 このように、ホモシステインの代謝には葉酸、B6、B12が必要だということが分かると思います。

 アイルランド、オランダ、カナダにおいてメチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(図の右下のほう)の遺伝子多型が神経管閉鎖障害の約12~15%を占めていたが、ドイツ、フランス、イギリスではそういった関係は無かったという研究があります。

 日本における程度についてはどうなのかよく分かりません。この酵素もある程度関係してくるかもしれません。

葉酸及び他のビタミンを用いた臨床研究

こちらの論文で概要が分かります。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

葉酸を含むマルチビタミンを使うと神経管閉鎖障害と尿路及び心血管の先天異常の発生と先天性四肢欠損などのリスクを減少できるかもしれないという趣旨です。各奇形ごと詳しく見ていきましょう。

 神経管閉鎖障害のデータ 

 まず、葉酸がまさかそんなに大事だとは言われていなかった時代の研究です。葉酸の効果がはじめてはっきりした研究です。

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(89)92103-X/abstract

悲しいことにabstractは無料公開されてないです。

他の論文に書いてました。

in the yorkshire region of the UK[34] and in Northen Ireland[35] a 91 and 83% reduction, respectively, was found in the recurrence rate of NTD.

(Czeizel AE. Primary prevention of neural-tube defects and some other major congenital abnormalities. Paediatr Drugs. 2000 Nov-Dec;2(6):437-49)

  

0.36mgの葉酸でイギリスヨークシャー地方で91%、北アイルランドで83%も神経管閉鎖障害の再発が減少したようです。

ただ、バイアスがあるということで当時の専門家から異議が唱えられたようです。

 

そこで、次の研究につながるわけです。

 

こちらは、1980年代始めに行われた英国の医学研究評議会(MRC)による多施設二重盲検ランダム化研究です。被験者の43%はハンガリー人です。神経管閉鎖障害の再発に関する研究で、神経管閉鎖障害は初発よりも再発の方が10倍多かったようです。

www.ncbi.nlm.nih.gov

高用量の葉酸(4.0mg)と葉酸+他のビタミン、他のビタミン、何もなしの4つを比較した試験がありました。4.0mgの葉酸で神経管閉鎖障害の再発が71%減少したようです。ビタミンB12についても一応有意に再発率が低下したようです。

具体的な成分は

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 (Czeizel AE. Primary prevention of neural-tube defects and some other major congenital abnormalities. Paediatr Drugs. 2000 Nov-Dec;2(6):437-49)

 

しかし、葉酸が高用量で問題です。これが次の研究につながるわけです。

 

 ハンガリーでの研究データを提示します。そもそも神経管閉鎖障害の発生率が少ないので、解析には相当多くのサンプルが必要になります。というわけで2つの研究(下記(Ⅰ)と(Ⅱ))を利用したプール解析のが行われたようです。投与群も対照群も5000例以上です。

 

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(Czeizel AE. Primary prevention of neural-tube defects and some other major congenital abnormalities. Paediatr Drugs. 2000 Nov-Dec;2(6):437-49改変)

研究(

妊娠を計画している女性に、受胎前の少なくとも1カ月間から2回目の月経喪失日以降まで、毎日マルチビタミン(Elevit Pronatal;葉酸0.8 mgを含む)の単一の錠剤または「微量元素」サプリメントのようなプラセボを無作為に服用させました。いわゆる出生児(生産児、死産児及び重大な胎児欠陥診断後の選択的中絶)において神経管閉鎖障害と他の先天異常疾患を評価しました。

結果

微量元素群において6例の出生児に神経管閉鎖障害が認められたましたが、マルチビタミン群においては認めらませんでした。葉酸を含むマルチビタミンに強力な有効性が認められ、初めての神経管閉鎖障害発生を93%減少させました。

 

研究(

PFMSの前向き症例対照比較研究が1993年から1996年に実施されました。

結果

葉酸を含むマルチビタミンを服用した女性からの出生児2968例のうち1例の神経管閉鎖障害が認められました。

一方、対照群(葉酸を含むマルチビタミンなし)においては神経管閉鎖障害が8例認められました。

 

プール研究(

ハンガリーのこれらの2つの研究をプール化した結果より、初めての神経管閉鎖障害発生3,.432例の約93 %が、生理学的投与量(0.8 mg)の葉酸を含むマルチビタミンを使用することで、予防できるかもしれないということが示されました。

 

これらの研究結果から言えることは、神経管閉鎖障害発生の予防には葉酸だけではなく葉酸とマルチビタミンの両方の摂取が有効であるということです。

 口唇口蓋裂のデータ

 

口唇口蓋裂はこちら

Dose-dependent Effect of Folic Acid on the Prevention of Orofacial Clefts | ELECTRONIC ARTICLE | Pediatrics

ありがたいことに全文見れます。

 

 口唇口蓋裂に関しては、少量の葉酸では差が出ず、6mgもの高用量の葉酸で結果が出たようです。たくさんの葉酸を服用するリスクともともとわずかである口唇口蓋裂を予防する利益のバランスが課題点のようです。この奇形については細胞の有糸分裂への関与などの別のメカニズムによるものであるかもしれないとこちらの論文に書いています。

 

 尿路障害や心血管奇形のデータ

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

0.8mgの葉酸を含むマルチビタミンサプリメントと微量元素を比較した試験で、

主要な先天異常が、微量元素では40.6/1,000であったのに対してマルチビタミンでは20.6/1,000でした。閉塞障害を主とする尿路異常、心室中隔欠損を主とする単独心血管奇形が有意に減少したみたいです。ついでに神経管閉鎖障害も有意に減ったようです。

 

その他の先天異常のデータ

Congential limb deficiencies[44] and congenital hypertrophic pyloric stenosis[45] also showed a trend, although not significant, to a lower occurrence after PFMS.

(Czeizel AE. Primary prevention of neural-tube defects and some other major congenital abnormalities. Paediatr Drugs. 2000 Nov-Dec;2(6):437-49)

先天性四肢欠損と肥厚性幽門狭窄症については、葉酸を含むマルチビタミンで発生低下の傾向は見られたものの有意差はなかったようです。

 

食事だけで十分量の葉酸を摂取することは難しい

 日本人の葉酸の摂取状況を見てみましょう。

 厚生労働省は18歳以上の日本人女性に対して葉酸摂取基準を240µgとしていますが、妊娠を計画している女性では640µg、妊娠中では480µgの葉酸摂取を推奨しています。しかし、下図のように日本人妊婦の葉酸の平均摂取量は推奨量を満たしていないのが現状です。

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 厚生労働省より引用

葉酸を豊富に含む食品の例としては以下のものが挙げられます。

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しかし、食事からの葉酸の摂取だけでは、一日に必要な葉酸の摂取量を満たすのは容易ではありません。

厚労省vsサプリメントメーカー、適切な葉酸摂取量は?

平均的な女性の葉酸摂取量が240μgであることから、厚労省はサプリメントで400μg追加すれば良いとしています。サプリメントメーカーはこれに対してサプリメントとして800μgを推奨しています。

1日の葉酸摂取量が400μgであれば葉酸の赤血球中濃度が十分になるまで6週間かかり、800μgであれば4週間かかると言われています。ということは640μgであれば大体5週間くらいだと思われます。

一方、受胎から胎児の器官形成まで早い器官で2週間(だいたい妊娠4週目)ほどです。つまり、サプリメント摂取量が400µgであったとしても、受胎1カ月前くらいから摂取を始めるとちょうど間に合うということです。ということは、妊活中で計画的な葉酸摂取から妊娠という流れならば厚労省の推奨に理があると思われます。

しかし、妊娠が判明してすぐに対応ということになると時間が許してくれません。素早く葉酸を体に蓄積させるには少し多めの葉酸が必要です。となると食事による240μg+サプリメントの800μgに理があることになります。

また、800μgまでは葉酸は多いほど効果があるという意見もあります。

結局は置かれている状況次第で、効果についてもどの程度の発生率で良しとするかの問題とも言えます。

ちなみに各器官の形成のタイミングは下図の通りです。

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商品について詳しく

厚生労働省が妊婦の方に推奨する栄養量とほとんど一致する栄養機能食品があります。葉酸も厚労省が推奨する量よりもより良い量である800µg入っています。

バイエル薬品株式会社のエレビットです。問題点は定価が4320円(税込)と少し高いというところです。

以下の表がエレビットに含まれている成分です。(1日3粒摂取した場合)

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3粒だけで1日の葉酸摂取推奨量を満たすことができます。

 

 こんなに高くては困るという方も当然おられるでしょう。複数のサプリメントを併用するというのも一つの手です。大塚製薬はたくさんの種類のビタミン剤を発売しています。
 
スーパーマルチビタミン&ミネラル+葉酸なら
葉酸は240+400=640μg
ビタミンB6は2μg
ビタミンB12は3μg
で推奨量を満たします。
 
希望小売価格から費用を計算すると
スーパーマルチビタミン&ミネラルが120日分で2592円
葉酸が75日分で734円なので
30日分に換算すると
2592×30÷120+734×30÷75=648+293.6=941.6円
30日分あたり941.6円とかなりお安くなります。
 
ビタミンは光に非常に不安定です。
エレビットにしろマルチビタミンにしろ遮光の工夫がさりげなくされています。
こういう配慮は私は好きです。

まとめ

・妊娠の1カ月前から適切な量の葉酸とビタミンB6、B12を摂ると神経管閉鎖障害という奇形のリスクが劇的に低下する。尿路や心血管の先天異常の発生、先天性四肢欠損についてもリスクが低下する。口唇口蓋裂は微妙。 

・食事だけでは難しいのでサプリメントを取るべき。

 

※画像はイメージです